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国土水循環モデル / 説明ページ
国土水循環モデル

国土水循環モデル 技術紹介

本ページでは、国土水循環モデルの基本仕様、入力データ、3次元モデル構造、水理地質構造、蒸発散・融雪を含む非定常解析、流量再現性評価を整理します。

Overview

国土水循環モデルの概要

国土水循環モデルは、統合型水循環シミュレーションシステム GETFLOWS を基盤とし、日本全国の地表水・地下水流動を評価する広域水循環モデルです。国内で整備された地形・水系・地質・土壌・土地利用・植生・気象・観測データを格子単位で統合し、地表水・地下水の流動、涵養、湧出、蒸発散を同一の3次元モデル領域内で扱います。

地形

地表面形状と集水条件の定義

水系

地表水境界と水域条件の設定

地質

表土・被覆層・基盤岩類と風化・弛み区分による水理物性設定

気象

降水・可能蒸発散量・日別気象の外力条件

Specifications

国土水循環モデルの基本仕様

本セクションでは、国土水循環モデルの代表仕様を示します。本モデルは、GETFLOWSによる地表水・地下水連成、水相・気相の二相流体系を基本とし、平均的な外力条件のもとで人為的水利用を考慮しない自然平衡状態を評価します。

名称国土水循環モデル
使用シミュレータ統合型水循環シミュレーションシステム GETFLOWS
流体システム地表地下連成、水・空気の気液2相流れ
解析範囲日本全国(島しょ部等は使用データの整備範囲に依存)
水平解像度0.25分 × 0.25分(代表設定では約500m格子)
鉛直分割25層構成
解析下限標高-3000m
解析条件人為的水利用を考慮しない、平均的な外力条件下での自然平衡状態
定常気象外力メッシュ平年値2020の降水量、CHELSA V2.1の可能蒸発散量を経験的係数0.65で補正した通年一定外力
流体物性(水)密度 1,000 kg/m³、粘性係数 1.0×10⁻³ Pa·s、圧縮率 4.5×10⁻¹⁰ 1/Pa
流体物性(空気)密度 1.22 kg/m³、粘性係数 1.82×10⁻⁵ Pa·s、圧縮率は圧力の逆数に比例
境界条件大気圧は標準大気圧、底面・側面は不透水壁境界、潮位はMSL 0mで固定
Input Data

入力データ

本モデルでは、国内向けに整備した外部データとモデル用に作成した推定値・派生データを、格子ごとの地形、水域、地質、土壌、土地利用、植生、気象、観測情報へ変換して組み込みます。ここではモデルに入力するデータとしての役割に絞って整理します。

使用した外部データソース一覧は別ページにまとめています。

分類データセット概要
気象・気候 平年降水 気象庁メッシュ平年値2020の降水量を年平均日量へ整え、定常解析の降水入力として使用します。
気象・気候 平年可能蒸発散量 CHELSA v2.1の可能蒸発散量を年平均日量へ整え、定常解析の蒸発散入力にします。
気象・気候 日別降水 気象庁解析雨量を対象格子へ割り当て、非定常解析の水入力時系列として使用します。
気象・気候 日別気象 農研機構メッシュ農業気象データとERA5由来の気圧などを、蒸発散、融雪、水収支評価に使用します。
気象・気候 将来気候入力 ISIMIP / CMIP6系のGCM入力を国土モデルへ割り当て、将来条件の比較に使用します。
地形・水系 陸域標高 基盤地図情報の数値標高モデルを、地表面、地形起伏、地下構造の上面を作る基礎情報として使用します。
地形・水系 海底地形・海域 GEBCOを用いて、沿岸域を含む海域セル、水深、境界条件を整理します。
地形・水系 河道網・河床高 日本域表面流向マップをもとに、河道位置、河床高、水系構造をモデル格子へ整理します。
地形・水系 湖沼地形 国土数値情報、HydroLAKES、GLOBathyなどをもとに、湖面標高、湖底標高、湖沼範囲を水域地形として整理します。
地質・土壌 表土・被覆層 日本土壌インベントリー、土壌図、森林土壌物理特性データをもとに、浅い地盤の保水性や透水性を水理物性として整理します。
地質・土壌 風化・地形面 第四紀層の厚さ分布、平野区分、地質境界面、風化面を組み合わせ、浅部から深部へ向かう地盤構成を整理します。
地質・土壌 基盤岩類 産総研の日本シームレス地質図を本モデル用の地質記号へ再分類したものを用いて、深部の水理物性として整理します。
地質・土壌 水理物性 一般値・文献値に基づく推定値を初期値とし、101地点の流量観測・ダム流入量データで最適化した水理物性を与えます。
土地利用・植生 土地利用 JAXA高解像度土地利用土地被覆図や国土数値情報を用いて、水域、人工構造物、水田、畑、森林、草地などを区分します。
土地利用・植生 植生タイプ ALOS森林クラスを用いて森林域と森林タイプを整理し、非定常解析で森林蒸発散を評価する際の植生条件として使用します。
土地利用・植生 樹高 ETH Global Canopy Height 2020の樹高情報を、森林域の蒸発散や植生パラメータを設定する際に使用します。
土地利用・植生 樹木密度 Crowther et al. の全球樹木密度データを、樹高とあわせて非定常解析の森林構造として反映します。
土地利用・植生 葉の季節性 農研機構メッシュ農業気象データからGSIを計算し、着葉日・落葉日として森林や植生域の季節変化を反映します。
土地利用・植生 作物係数 ISIMIP3の作物カレンダー、農研機構メッシュ農業気象データをもとに、FAO-56モデル用の作物係数と土壌蒸発係数を作成し、農地などの蒸発散条件に使用します。
観測 観測流量 国内河川観測点の時系列データを用いて、計算流量との比較によりモデル再現性の診断を行います。
観測 ダム観測 ダム流入量の時系列データを用いて、計算流量との比較によりモデル再現性の診断を行います。
3D Structure

3次元計算領域の構成

このセクションでは、解析範囲、平面格子、地表面条件、深度方向の層構成を扱います。

STEP 01

解析範囲の設定

対象地域のポリゴンに基づき、解析対象となる平面格子範囲を定義します。

STEP 02

平面格子の作成

対象範囲を所定の水平解像度で分割し、モデル計算の平面格子を作成します。

STEP 03

地表面条件の割り当て

標高、河川、湖沼、海域、土地利用、気象、植生を格子単位で整理します。

STEP 04

深度方向の層構成

地表面から解析下限までを深度方向に分割し、3次元計算領域を構成します。

Atmosphere降水量、可能蒸発散量などを与える大気側境界。
Surface地表水、河川、湖沼、海域、土地利用を含む地表面条件。
Top Soil表土層(1m)。土壌物性、土地利用、植生条件を反映します。
1-5 m浅部の表層地盤を3層に区分します。
5-50 m風化帯・被覆層を6層に区分します。
50-200 m深部側の風化・弛み領域を9層に区分します。
Bedrock基盤岩を4層に分け、標高-3000mの解析下限まで配置します。
Hydrogeology

水理地質構造と水理物性

地質図や土壌図に含まれる分類情報を、モデル計算で用いる水理物性へ変換します。ここでは、表土・水域底質、被覆層、風化・弛み区分、基盤岩類をどのように整理し、透水性、貯留性、不飽和帯の水分保持特性へ反映するかを示します。

水理物性として扱う項目

要素内容モデルで反映する性質
透水係数地層や土壌を水が通りやすいかを表す値地下水流動、河川への流出、涵養量に影響します。
異方性 kv/kh鉛直方向と水平方向の透水性の違い地下水が横へ流れやすいか、下へ浸透しやすいかを調整します。
有効空隙率水の移動に関わる空隙の割合地下に蓄えられる水量や流動速度に関係します。
2相流特性水と空気が同じ空間を占めるときの水分保持特性不飽和帯の浸透、蒸発、保水の表現に使います。
比貯留係数圧力変化に対してどれだけ水を出し入れするかを表す値地下水位変化や貯留変化の評価に関係します。

水理地質の組み立て

表土・水域底質、被覆層、風化・弛み区分、基盤岩類では、水理物性が異なります。ここでは、各データセットをどの地質・土壌要素として扱い、どの水理物性へ反映するかを整理します。

表土・水域底質農地・森林の表層土壌物性と水域判定を、地表近傍の水理条件へ変換します。
要素内容モデルで反映する性質
表土農地土壌の土壌物理特性値、森林土壌のA層・B層物性、土地利用、植生条件地表近くの浸透しやすさ、保水性、有効空隙率、貯留性を設定します。
水域底質河川、湖沼、海域の判定水域と地下の水の出入り、浸透・湧出の場を表現します。
被覆層厚い透水層、薄い地層、平野・海岸域の分布を、浅部地質として整理します。
要素内容モデルで反映する性質
厚い透水層表層地質の分布と主要平野の基底面標高分布を整理します。平野部などの厚い浅部透水層として、基盤岩類より優先して配置します。
薄い地層表層地質と地形区分に基づき、沖積堆積層やその他の薄い地層の層厚を整理します。山地・平野などで異なる浅部被覆層の厚さと透水性を表現します。
被覆層下の基盤岩類被覆層の下に存在する基盤岩類分布を、周辺の基盤岩類分布から推定します。被覆層と深部基盤を連続した3次元地質構造として扱います。
風化・弛み区分標高データから作成した複数の区分面により、基盤岩類の深度方向の水理物性変化を表現します。
要素内容モデルで反映する性質
区分面ラスタ地形標高、接峰面、接谷面などから、浅部から深部へ向かう複数の基底面を標高データとして整備します。基盤岩類の平面分布に重ね、深度方向の風化・弛み程度を決めます。
水理物性の深度変化同じ基盤岩類でも、浅部ほど相対的に流れやすく、深部ほど流れにくい構成にします。平面分布した地質区分に、深度方向の水理物性変化を与えます。
3次元化基盤岩類の平面分布と風化・弛み区分面を重ね合わせます。地質区分と深度方向の物性変化を組み合わせた3次元水理地質構造を構成します。
基盤岩類20万分の1日本シームレス地質図V2をもとに、深部材料として使う基盤岩類を整理します。
要素内容モデルで反映する性質
基盤岩類分布表層地質として現れる基盤岩類と、被覆層下に推定した基盤岩類分布を統合します。被覆層の下に連続する深部地質構造として扱います。
堆積岩類堆積岩の年代や岩相を整理します。砂岩、泥岩、礫岩などの違いを、深部の透水性や貯留性に反映します。
火山岩類火山岩の岩質や年代を整理します。火山地域の地下水流動や湧水特性を表現します。
深成岩・変成岩類花崗岩類や変成岩類など、深部基盤を構成する岩石を整理します。広域地下水流動の背景となる深部構造として扱います。
Transient Analysis

非定常解析の外力条件

国土モデルの定常解析では、メッシュ平年値2020の降水量とCHELSA V2.1の可能蒸発散量を、通年一定の外力条件として与えます。一方、流量再現性の確認や季節変化の診断では、日別気象を用いた非定常解析を実施し、森林、農地、その他の土地利用区分ごとに蒸発散条件を設定します。降雪地域では積雪・融雪過程を別途扱い、水入力を降雨量と融雪量の合計として与えます。

対象主な入力・設定モデルでの使い方
定常解析メッシュ平年値2020の降水量、CHELSA v2.1の可能蒸発散量 × 0.65国土水循環モデルの自然平衡状態では、平年降水量と補正した可能蒸発散量を、通年一定外力として使用します。
森林の非定常解析ALOS森林クラス、樹高、樹木密度、農研機構メッシュ農業気象データから推定したGSI由来の着葉日・落葉日、日別気象林床面蒸発モデルと、森林タイプ・林分構造・気象条件を考慮する樹冠遮断・蒸散モデルを組み合わせ、樹冠遮断、蒸散、林床面蒸発を分けて評価します。
農地・その他の非定常解析FAO-56モデル用の作物係数と土壌蒸発係数、ISIMIP3の作物カレンダー、農研機構メッシュ農業気象データFAO-56 Penman-Monteithにより参照蒸発散量を求め、農地やその他地表の蒸散・蒸発成分を評価します。
積雪・融雪の非定常解析日別気象、降雨量、融雪量降雪地域では、深沢・多田(2024)の考え方に沿って積雪・融雪を考慮し、モデルへ入る水量を降雨量+融雪量として整理します。
実蒸発散への変換表土物性に応じた蒸発散効率可能蒸発散量をそのまま実蒸発散量とせず、表土物性と水分状態に応じて低減します。森林域はFeddes et al. (1978)の根域吸水モデル、森林以外はLehmann et al. (2018)に基づく蒸発効率を使います。
モデルへの反映入力水量、可能蒸発散量、実蒸発散量降雨・融雪、降雨遮断、蒸発散効率を反映した水の出入りとして、地表水・地下水を一体で扱う水循環計算に与えます。
Validation

全国地点の流量再現性

国土モデルでは、流量観測・ダム流入量の時系列データを用いて水理物性の一部を最適化しています。このセクションでは、その後に実施した全国475地点の観測流量と計算流量の比較をインタラクティブに表示し、広域モデルとしての流量再現性を確認できるようにしています。再現性が低い地点については、3次元モデルやパラメータだけでなく、観測値の精度、局所地質、人為的水利用、気象外力なども含めて総合的に判断する必要があります。

全国475地点の流量比較

地図上の地点または選択欄から地点を選択すると、対応する流量比較グラフを表示します。

475地点
地点データを読み込み中です。

代表地点の流量比較

全国475地点の流量比較から、代表地点を初期表示しています。

代表地点の観測流量と計算流量の比較グラフ
観測流量(点)と計算流量(線) / 対数スケール

本図は、全国475地点の流量比較CSVに基づき作成しています。地点ごとの再現性は、3次元モデルやパラメータに関わる条件に加え、観測値の精度、局所地質、人為的水利用、気象外力などの影響も受けます。

Outputs

主な水循環評価量

モデル解析結果は、地図表示および地域診断レポートとして整理できます。入力データと解析結果を重ねて確認することで、地形、地質、土地利用、気象条件が水循環量に与える影響を評価します。

地下水位

地表面を基準とした地下水面位置とその空間分布を評価します。

G.L. m

地表水深分布

河川、湖沼、低地などにおける地表水深の空間分布を評価します。

m

表土層の水飽和率

表土層に水がどの程度満たされているかを評価します。

-

地表水流動量

河川や地表面を通じて移動する水量を把握します。

m³/day

地下水流動量

地下で水がどの方向へ、どの程度移動するかを評価します。

m³/day

涵養量

降雨などが地下へ入り、地下水として補給される量を評価します。

mm/day

湧水量

地下から地表や河川へ戻る水の分布と量を確認します。

mm/day

実蒸発量(地表)

地表面や水面から大気へ戻る水量を評価します。

mm/day

実蒸発量(地下)

地下や不飽和帯を通じて大気へ戻る水量を評価します。

mm/day

蒸発効率

可能蒸発量に対して、実際に蒸発する割合を整理します。

-

有効降水量

流出や涵養に寄与する降水量を水循環量として整理します。

mm

流線・流況

地表水・地下水の流動方向と流況を可視化します。

flow lines

Webmapでの入力条件・解析結果表示

Webmapでは、国土水循環モデルに組み込んだ地形、土地利用、気象条件と、計算された水循環量を地図上で確認できます。Webmapトップページでは、公開ビューアーと各モデル説明ページへの導線を整理しています。